サンスクリットとパーリ語の違い
パーリ語は東南アジアで広く信仰されている上座仏教において経典の中で用いられています。要するにミャンマーで唱えられているお経はパーリ語です。ミャンマーではビルマ文字でパーリ語が表記されるため一見してミャンマー語とパーリ語の区別がつきません。
より正確に言うならば,パーリ語はモン文字(ビルマ文字の元となった文字)で表記されています。上座仏教はモン人(族)からビルマ人(族)へ伝えられたという歴史に注目していただくと分かりやすいと思います。
またミャンマー(ビルマ)語とモン語とで読み方が異なります。
【三帰依文】…仏教の三宝(仏・法・僧)に対する帰依を表明するもの「Buddhaṃ saraṇaṃ gacchāmi」日本における一般的なよみ(ブッダン・サラナン・ガッチャーミ)または(ブッダム・サラナム・ガッチャーミ)「ဗုဒ္ဒံ သရဏံ ဂစ္ဆမိ」ミャンマー(ビルマ)語よみ(ボウッダン・タラナン・ゲッサーミ)モン語よみ(ブッダン・サラナン・ガッチャーミ)←モン語読みの方が実際の発音により似ている。
パーリ語を理解できるのは僧侶を中心とする知識人でした。その中でも技術や思想に関する専門用語として、ミャンマー語にはない概念を表すためにパーリ語からの借用語が増えたのだと考えられます。場合によっては自分の知識をひけらかすためにパーリ語がつかわれることもあったのかもしれません。
ミャンマーにおいてはパーリ語による文学も盛んでした。日本の奈良・平安時代以降に漢籍が貴族の間で学ばれるようになったことと似ていますね。ビルマ文字の字母のうち灰色に塗られた文字はパーリ語を表記するための文字であり、使用頻度が低いです。
パーリ語とサンスクリット(語)の違い
乱暴な説明になりますが、「パーリ語はサンスクリットがくだけて,(やや)単純になったもの」です。母音の変化・消滅や発音の区別の消滅などが見られます。
それよりも重要な違いは、パーリ語は上座仏教の典礼言語で、サンスクリットは大乗仏教の典礼言語であったことでしょうか。
上座仏教が広く信仰された東南アジアにおいてサンスクリットよりもパーリ語からの借用が盛んに行われたことに不思議はないと思われます。ただし個人的な感覚になってしまいますが、タイ語の語彙にはパーリ語よりもサンスクリットから借用の方が多いような気がします。実際にタイ語(タイ文字)ではś ṣ sの区別がなされています。パーリ語ではこれらを区別しません。またビルマ文字ではś ṣ sをそれぞれၐ (ś), ၑ (ṣ), သ (s) と表記します。まえの二つを見たことがない方も多いのではないでしょうか。パーリ語ではś ṣ sの区別をしないためすべてがသ (s)で表記されます。
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